施工例
クリーンエネルギーで暮らし健康寿命をのばす家
片側一面の窓と板張りの外装で住宅地に建つこの住まいは、ゼロエネルギー住宅の著書を持ち、全国で活躍する能代市の建築家、西方里見氏の自邸。設計コンセプトは「死なないための家」だ。寒さの厳しい秋田県では風呂場の温度差を原因とした死亡者数が毎年200人を超え、交通事故死のおよそ5倍にのぼる。65歳を迎えた建築家は健康で長生きするために自宅を設計し、新築工事を長年のパートナーである弊社に依頼してくれた。
著書も多数持ち、日本の省エネルギー建築の第一人者と目されるキャリア35年に集大成といえるこの住まいは、これから普及を目指すプロトタイプでもあり「簡単・簡易・簡素」が意識されている。性能は追求しながら、簡単な設備と素材を用い、簡易な組み立てによって簡素に暮らせる家。無駄がなく質素であることを表す「簡素」は、この家の冷暖房設備も指している。床下に置いた普及版のエアコン一台で、夏も冬も快適に過ごせるという建物の秘密は躯体の性能にある。
壁36cm、天井40cmの断熱材が入り外気温に影響されにくい構造。その上で暖房機と捉える日射取得のための大きな窓が南側一面に設けられている。樹脂とアルミの良さを合わせた冷輻射の少ない窓は、玄関の木製高断熱ドアよりも熱を通さない。気になるのは夏の暑さだが、そこは外付けブラインドで調整する。真夏でも水平程度のルーバー角度で遮熱でき、明るさを損なわないばかりか、冬は弱い日差しを拡幅させる機能も持つ。
一般的に性能の高い住宅は熱の出入りを制御する熱交換換気システムが採用されるが、西方邸は屋根裏と床下の換気口から高低差と温度差を利用して排気するパッシブ換気。複雑な機械や動力に頼らずにクリーンな室内環境を保っている。
さらに電力もクリーンな太陽光発電。発電量は月平均3万円程度で、ひと月の使用が1万円以下というから、月2万円以上を稼ぐ屋根という計算となる。これまでの置型パネルとは一線を画し、屋根材を兼用した太陽光パネルで見た目も機能もスマートだ。
秋田杉という身近な建築材によるやすらぎと、凝縮されたエコハウスの理念が詰まった、簡単・簡易で簡素な暮らしが叶う、新時代の健康寿命をのばす住まいだ。
Data
延床面積 / 142.41㎡(43.0坪) |
工法 / 新在来工法 |